産後、慣れない育児の中で「手首が痛くて赤ちゃんを抱っこするのが辛い……」と悩んでいるお母さんは少なくありません。この親指の付け根付近に起こる痛みは、一般的に「ドケルバン病(腱鞘炎の一種)」と呼ばれています。
「赤ちゃんが重くなったせいかな?」「双子だから負担が大きいのかな?」と思われがちですが、最近の研究では少し意外な事実が見えてきました。今回は産後のドケルバン病になりやすい方の特徴や、痛みの本当の原因についての研究結果をご紹介します。この記事を読むことで、ご自身の痛みの背景を理解し、前向きにケアに取り組むヒントが見つかるはずです。
最新の研究でわかった「産後の手首の痛み」5つのポイント
最近の医療論文(Daglan氏ら、2023年)では、産後にドケルバン病を発症した女性とそうでない女性を比較し、どのような要因が発症に関わっているかを調査しました。その結果、以下のポイントが明らかになりました。
1. 「初めての出産」はリスクが2倍以上に
初めて出産を経験したお母さんは、2回目以降の方に比べてドケルバン病になるリスクが約2.2倍高いことがわかりました。これは育児に慣れていないために、抱っこや授乳の際に手首に負担のかかる姿勢(手首を深く曲げた状態など)を無意識にとってしまうことが関係していると考えられています。
2. 妊娠期間が「40週以上」だった場合、リスクが高まる
意外なことに妊娠期間が40週を超えて長かった方は、そうでない方に比べてリスクが約5.8倍と大幅に高くなる傾向がありました。これには妊娠後期から産後にかけての体内の水分量のが増えやすく、むくみ(浮腫)の程度がひどくなり、手首の腱の通り道を浮腫が圧迫している可能性が指摘されています。
3. 「赤ちゃんの体重」や「双子」は直接的な原因ではない?
「赤ちゃんが重いから手首を痛めた」と思われがちですが、この研究では赤ちゃんの出生体重や、双子(多胎妊娠)であることは、ドケルバン病の発症リスクとは直接関係がないという結果が出ました。
4. 痛みの正体は「重さ」よりも「使い方」
研究チームは手首にかかる純粋な「重さ(負荷)」よりも、赤ちゃんを抱え上げたり授乳したりする際の「繰り返しの動作」や「不自然な手首の角度」の方が、炎症を引き起こす大きな要因であると推測しています。
5. 肥満指数(BMI)との関連
出産前のBMI(肥満指数)が25を超えていた場合も、リスクが約2.1倍高まることが示されました。これも妊娠期間の長さと同様に、体のむくみやすさが関係していると考えられています。
つまり、どういうこと?
この研究結果が私たちに教えてくれるのは、「手首の痛みは、単に赤ちゃんが重いせいだけではない」ということです。
特に初めての育児では授乳中や抱っこの際に、知らず知らずのうちに手首を強く曲げたり、親指側にひねったりする動きを繰り返してしまいがちです。こうした「動きのクセ」が、腱鞘(腱が通るトンネル)に炎症を起こす主な原因となっている可能性があります。
また妊娠期間や体質による「体のむくみ」も背景にあるため、ご自身の努力不足や体力のなさのせいではありません。多くの場合は、授乳期間が終わる頃には自然に改善していく「一時的な状態」であることも多い症状であることも、これまでの研究で示唆されています。
まとめと、今日からできるアドバイス
産後の手首の痛みは非常に辛いものですが、原因を正しく知ることで適切な対策をとることができます。
- 抱っこや授乳の姿勢を見直してみましょう: 手首をガッチリと曲げて固定していませんか? 授乳クッションをうまく活用して、手首への負担を減らす工夫をしてみてください。
- 「重さ」を怖がりすぎないで: 赤ちゃんが成長して重くなること自体を不安に思う必要はありません。大切なのは手首に優しい「持ち方」を身につけることです。
- 専門家に相談を: 痛みがある場合は、我慢せずに専門家に相談してください。手首に負担をかけない体の使い方の指導を受けたり、専門的な施術を受けることで、痛みが和らぐ可能性が高まります。
あなたの体は、今まさに一生懸命に育児を頑張っている証拠です。一人で抱え込まず専門家の力を借りながら、少しずつ手首を労わっていきましょう。
出典: Daglan E, et al. Risk Factors Associated With de Quervain Tenosynovitis in Postpartum Women. Hand (N Y). 2023;19(4):643-647.





お電話ありがとうございます、
めぐみ整骨院でございます。