ご出産、本当におめでとうございます。
新しい命の誕生は、言葉にできないほどの喜びと感動をもたらしてくれたことでしょう。
しかしその一方で、慣れない育児と睡眠不足の日々の中で、ご自身の身体の悲鳴に戸惑ってはいませんか?
特に産後のママさんから非常に多く寄せられる悩みが、**「膝(ひざ)の痛み」**に関するお悩みです。
「赤ちゃんを抱っこして立ち上がろうとすると、膝にズキッとした痛みが走る」
「階段の上り下りが痛くて仕方がない」
「妊娠前はこんなことなかったのに、私の身体、どうなっちゃったの?」
そんな不安を抱えているあなたへ。
まず最初にお伝えしたいことがあります。それは、**「高齢者が経験する膝痛、軟骨がすり減っているから痛む膝痛ではない」**ということです。
実は最近発表された医学研究によって、産後の膝の痛みは驚くほど多くの女性が経験する「生理的な変化」の一環であることが明らかになってきました。
この記事では最新の調査論文をもとに、なぜ産後のママの膝が痛くなるのか、その痛みの正体は何なのか、そしていつ頃良くなるのかについて、専門的な視点からわかりやすく紐解いていきます。
正しい知識を持つことは、不安を解消する第一歩です。この記事が、痛みに耐えながら育児を頑張るあなたの心を、少しでも軽くするお手伝いになれば幸いです。
1. 最新の研究で判明!産後の膝痛は「2人に1人」が経験している
「周りのママ友は元気そうなのに、私だけ膝が痛くて情けない……」 もしそんな風に自分を責めているなら、今すぐその考えを手放してください。
2022年に発表した論文(The Healer Journal of Physiotherapy and Rehabilitation Sciences)によると、産後の女性を対象にした調査で、なんと約54.3%、つまり半数以上の方が「産後の膝痛」を経験しているというデータが示されました。
調査対象となったのは、平均年齢27歳前後の若いママたちです。年齢による老化現象ではなく、まさに出産という一大イベントを経た女性たち特有の悩みであることがわかります。 この数字は、産後の膝痛が「珍しいトラブル」ではなく、**「誰もが経験しうる一般的な身体反応」**であることを証明しています。あなたの膝が悲鳴を上げているのは、それだけ大きな変化を乗り越えて、身体が一生懸命に適応しようとしている証拠なのです。
2. なぜ痛くなるの?論文が解き明かす「4つの原因」
では、なぜ出産すると膝が痛くなるのでしょうか?
「体重が増えたから?」と思われる方も多いでしょう。確かにそれも一因ですが、論文ではもっと根本的な、女性の身体のメカニズムに踏み込んで解説しています。主な原因は大きく分けて4つあります。
① 「リラキシン」ホルモンの影響で関節が緩む
妊娠中から産後にかけて、女性の身体には「リラキシン」という特殊なホルモンが分泌されます。このホルモンには、赤ちゃんが狭い骨盤を通って生まれてこられるよう、全身の靭帯(じんたい)や関節を緩めるという重要な役割があります。
この「緩める」作用は骨盤だけでなく、膝を含む全身の関節に影響を及ぼします。リラキシンによって膝の靭帯が緩むと、関節の固定力が弱まり、グラグラと不安定な状態(弛緩性)になります。 まるで、ネジが緩んだ家具を使っているような状態です。この不安定な状態で体重を支えたり動いたりするため、関節や周りの筋肉に過剰な負担がかかり、痛みが発生しやすくなるのです。
② 劇的な「荷重バランス」の変化と足のアーチ
妊娠中、お腹が大きくなるにつれて、身体の重心は変化します。
さらに興味深いことに、論文では「足の構造の変化」についても触れられています。産後は、足の長さが伸びたり、土踏まずのアーチ(高さ)が低下したりすることがあるのです。
足の裏は身体を支える土台です。この土台のアーチが崩れると、その上にある膝への負担が激増し、膝の痛みを引き起こすリスク要因となります。
つまり骨盤だけでなく、足元からのバランスの崩れも膝に影響しているのです。
産後は足首まわりが痛くなるという症状も多々見受けられます
③ 授乳による「カルシウム不足」と骨への影響
意外と見落とされがちなのが、栄養面の問題です。
論文では、妊娠・授乳期における「骨の健康」についても警鐘を鳴らしています。お腹の赤ちゃんや母乳を通して、ママの身体からは大量のカルシウムが必要とされます。
この時期に十分な栄養補給ができないと、ママの骨密度が一時的に低下したり、関節の健康が損なわれたりするリスクが高まります。さらにホルモンバランスの変化そのものが、カルシウム不足を引き起こしやすくする要因にもなっているのです。
産後の膝は「構造的に緩んでいる」だけでなく、「栄養的にも弱くなっている」可能性があるのです。
④ 育児特有の「姿勢」と生活習慣
論文では、育児中の具体的な生活動作も痛みの原因として挙げられています。 例えば、「横向きで寝る時間(添い寝)の増加」や、「乳児のケアに伴う下半身への負荷」が、身体のバランスを崩す要因となります。 授乳のために長時間同じ姿勢で固まったり、不自然な体勢で添い寝を続けたりすることは、骨盤や股関節、そして膝のねじれを引き起こす原因になります。
3. 特にツライのは「階段」!その理由は?
この論文の中で非常に具体的なのが、「どのような時に痛みを感じるか」という調査結果です。
調査によると、産後女性の約25.3%が、「階段の上り下り」の際に中程度の痛みを感じていると回答しています。 なぜ階段なのでしょうか? 論文では、膝のお皿(膝蓋骨)に関わるトラブル、特に「膝蓋大腿関節障害」のような痛みが妊娠・産後期には一般的であると述べられています。
階段の上り下りでは、片足に全体重がかかる瞬間があります。ホルモンの影響で緩んで不安定になった膝関節に、体重による強い「せん断力(ずれる力)」が加わります。そのため、平地を歩くよりもはるかに強い痛みを感じやすくなるのです。
4. つまり、どういうこと?
ここまで論文の内容を見てきましたが、これらは決して「怖い話」ではありません。むしろ、「理由がわかれば、対策ができる」という希望のメッセージです。
論文では、「産後4ヶ月頃までに、膝の痛みの症状が改善することが多い」という、非常に勇気づけられる報告も紹介されています。 ホルモンバランスが落ち着き、身体が新しい環境に適応してくれば、痛みは自然と和らいでいく可能性が高いのです。
しかし、4か月を過ぎても1年を経過しても痛い方がいらっしゃるのも事実です。そこで、論文の知見に基づき、専門家から見た「今すぐできる対策」をご提案します。
太ももの筋肉を味方につける
論文の中で引用されている研究では、「太ももの筋力を適切に維持すること」が、膝の健康を守るために有利であると述べられています。 靭帯が緩んでしまっている今、その代わりに膝を支えてくれるのは「筋肉」です。 とはいえ、産後に激しい運動は禁物です。椅子に座ったまま膝を伸ばしてキープするなど、関節に負担のかからない優しい運動から始めてみましょう。
「オーバーウェイト」に注意しつつ、栄養を
調査では、産後女性の30.4%が過体重(オーバーウェイト)であったと報告されています。体重管理は膝への負担を減らすために重要ですが、無理なダイエットは禁物です。 先ほど触れたように、カルシウム不足は骨や関節の大敵です。バランスの良い食事を心がけ、骨と筋肉の材料をしっかり身体に届けてあげてください。
専門家による「アライメント調整」
論文の結論部分では、産婦人科領域における理学療法やケアの重要性が強調されています。 緩んでしまった骨盤や、崩れてしまった足のアーチ を一人で整えるのは難しいものです。
専門家により、ホルモンの影響で緩んだ関節のバランス(アライメント)を整えたり、凝り固まった筋肉をほぐしたりすることで、痛みを和らげるお手伝いが可能です。
まとめ
今回の記事でご紹介した論文のポイントをまとめます。
- 産後の膝痛は、半数以上のママが経験する「よくあること」。
- 原因は「ホルモンによる関節の緩み」「足のアーチや姿勢の変化」「カルシウム不足」など。
- 特に「階段」や「添い寝などの育児動作」で痛みが出やすい。
- 多くの場合は産後数ヶ月で改善に向かうが、適切な筋力維持やケアが大切。
産後の膝の痛みは、あなたが赤ちゃんを守り、育てている勲章のようなものです。でも、その勲章があなたを苦しめてしまっては意味がありません。
ママが笑顔でいることが、赤ちゃんにとっても、ご家族にとっても一番の幸せです。 あなたの身体は、今まさに回復しようと頑張っています。その回復を助けるために、専門家を頼ることも選択肢に入れてみてくださいね。
参考文献: Rasheed S, Sameer S. “Prevalence of knee pain in post-partum females in Pakistan; A cross-sectional survey.” The Healer Journal of Physiotherapy and Rehabilitation Sciences, 2022; 2(1)





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