「赤ちゃんを抱っこしていると手首が痛い」「朝起きると指がこわばる」「ふとした手の動きでピキっと激痛が走る」といったお悩みはありませんか?
これらは「腱鞘炎(けんしょうえん)」、いわゆる「ばね指」や「ドケルバン病」と呼ばれる症状かもしれません。この病気は、実は生涯で約40人に1人が経験すると言われるほど身近なもので、国内でも年間約4万人もの方が発症しています。
特に閉経後の女性や、出産前後(周産期)の女性に多く見られることが知られていますが、「なぜこの時期に多いのか?」という原因は長年謎のままでした。その謎を解き明かす研究結果を詳しくご紹介します。
今回の研究からわかった4つのポイント
信州大学の研究チームはマウスを使った実験を通じて、女性ホルモンと腱(指を動かす紐のような組織)の状態について詳しく分析しました。
1. 女性ホルモンは「腱の健康」を守る番人
女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は、生殖だけでなく、血管や骨、そして「腱」の健康を維持するためにも重要な役割を担っています。 私たちの腱には、女性ホルモンのメッセージを受け取る「レシーバー(受容体)」が存在することが、今回の研究で初めて確認されました。つまり、指の腱は女性ホルモンの影響をダイレクトに受けているのです。
2. ホルモンが減ると、腱に「炎症の火種」が出現する
エストロゲンが不足した状態(閉経後を再現した状態)を調べたところ、腱の組織の中で「SAA1」や「SAA3」といった急性の炎症を示すサインが、通常より2倍以上に増えていることがわかりました。 女性ホルモンが減少することで、腱が本来持っている「自分をメンテナンスする力(恒常性)」が崩れ、炎症を起こしやすい環境になってしまうのです。
3. ホルモン不足や加齢により腱が「硬い組織」に変化する
研究では、加齢やホルモン不足によって、腱の性質が変化することもわかってきました。本来はしなやかなゴムのように動くはずの腱が、少し硬い「軟骨」に近い性質へと変化(軟骨化生)してしまうのです。 その結果、腱とそれを包む鞘(さや)の間で摩擦が増え、指を動かすときの「引っかかり」や「痛み」につながると考えられます。
4. 体がホルモン不足を補おうと「過敏」になる
ホルモンが不足すると、腱の細胞はなんとかメッセージを受け取ろうとして、レシーバー(エストロゲン受容体α)の数を増やして待ち構えるようになります。この変化は加齢とともに進むことも判明しました。この過剰な反応が、かえって組織のバランスを乱す一因になっている可能性があります。
つまり、どういうこと?
「指の痛みは使いすぎのせいかな?」と自分を責めてしまう方も多いですが、実は体内のホルモンバランスの変化が、腱のしなやかさを保つ力を弱めてしまっているという背景があるのです。
特に閉経前後や出産後は、エストロゲンの量が大きく変動します。この時期に指の不調を感じやすいのは、決して気のせいではなく、「体の仕組みが変化し、腱がデリケートな状態になっている」という大切なサインなのです。
まとめとアドバイス
指の不調は、日常生活の質(QOL)に大きく関わります。特に指や手首が痛むと、家事や手仕事も大変になりますよね。 もし「指に違和感がある」「痛みが続いている」という場合は、以下のような一歩から始めてみませんか?
- 専門家に相談する: 専門家に相談することで、手首や指先だけでなく関連する首や肩、体全体のバランスを整えることにより、腱への負担を減らす助けになります。
- 「使いすぎ」以外の原因を知る: 痛みの背景にホルモンバランスがあることを知るだけでも、心の負担が軽くなるはずです。
- 無理をせず、早めのケアを: 腱鞘炎は進行すると手術が必要になることもありますが、早めに適切なケア(安静や環境改善)を始めることで、不自由を減らすことができます。
健康な手指を維持することは、これからの長い人生を元気に楽しむ「健康寿命」を延ばすことにもつながります。一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談くださいね。
出典: 内山 茂晴 他、「閉経モデルマウスを用いた狭窄性腱鞘炎の病態解析」、科学研究費助成事業 研究成果報告書(15K10394)、2018年。





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