変形性膝関節症の新常識:膝内側と膝のお皿周辺の両方の変形が、階段での痛みを5倍に増やす

「階段の上り下りがつらい」「膝が痛くて外出が億劫」そんな悩みを抱えている方はいませんか?膝の痛みは変形性関節症が原因の一つと言われていますが、実は痛みの原因は一つだけではありません。今回は膝の痛みの原因と、特に階段で痛みを感じる方にとって役立つ研究についてお伝えします。

膝の変形性関節症は「内側」だけじゃない

京都大学を中心とした研究グループが発表した興味深い研究があります。この研究では内側の膝に変形性関節症を持つ日本人患者143人を対象に、膝の痛みの原因を詳しく調査しました。すると、実に68.5%(約7割)の患者さんが、「内側の膝関節」だけでなく、「膝のお皿(膝蓋骨)と太ももの骨の間の関節」にも変形性関節症を併せ持っていることがわかりました。

研究が明らかにした3つの重要なポイント

1. 階段の上り下りが特につらいのはなぜ?

研究では内側と膝のお皿周辺の両方に変形性関節症がある患者さんは、階段の上り下り時に痛みを感じやすいことがわかりました。具体的には階段を上る時に約5倍、下る時に約4倍も痛みを報告する確率が高かったのです。これは階段の上り下りでは膝に通常の歩行よりも強い負荷がかかるため、特に痛みを感じやすいのです。

2. 膝の曲げ伸ばしが硬いと痛みが増す

研究では両方の関節に変形性関節症がある患者さんは、膝を曲げる角度が小さく(曲げにくく)、完全に伸ばしにくい傾向があることもわかりました。この「膝の曲げ伸ばしが硬い状態」は、階段の上り下り時の痛みと関連していました。つまり膝の柔軟性を保つことが痛みの軽減につながる可能性があるのです。

3. 膝のお皿の位置よりも全体のバランスが重要

意外なことに膝のお皿の位置や高さは痛みと直接的な関係がありませんでした。それよりも内側に荷重が偏っているかどうかなど、全体的な膝のバランスが痛みに影響を与えていました。これは、膝の痛み対策を考える上で重要な発見です。

つまり、どういうこと?

この研究からわかることは、膝の痛み特に階段で感じる痛みは「一つの原因」だけではなく、複数の要因が重なって起こっている可能性が高いということです。多くの場合、内側の膝だけでなく、膝のお皿周辺にも負担がかかっているのです。

日常生活で階段の上り下りがつらいと感じる方は、単に内側の膝の問題だけでなく、膝全体の状態や、膝を曲げる柔軟性も確認する必要があります。また、膝のバランスを整えることも重要です。

膝の痛みは「歳だから仕方ない」とあきらめてしまいがちですが、原因を理解し適切な対策をとることで、痛みを軽減し快適な日常生活を送ることができる可能性があります。

特に階段で痛みを感じる場合は、以下の点に注意してみてください:

  • 膝の軽い曲げ伸ばしのストレッチを日常的に行う
  • 無理な運動や長時間の立ち仕事は避ける
  • 階段を上る時は手すりを利用する
  • 肥満傾向にある場合は体重管理も大切

膝の痛みが続く場合は専門家に相談することをお勧めします。専門家はあなたの膝の状態を細かくチェックし、痛みの原因に合わせた適切なアドバイスや施術を提供できます。

自分に合ったケアを見つける第一歩は、痛みの原因を理解することから始まります。膝の痛みは、適切な対策で改善する可能性があります。一人で悩まず専門家の力を借りながら、痛みの少ない毎日を目指しましょう

※参考文献:Fujima, H., Fukutani, N., Aoyama, T., et al. (2016). Clinical Impact of Coexisting Patellofemoral Osteoarthritis in Japanese Patients With Medial Knee Osteoarthritis. Arthritis Care & Research, 68(9), 1317-1325. doi:10.1002/acr.22817

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