軟骨だけでは説明できない変形性膝関節症の痛み──“軟骨下骨”の変化が示す早期対処の重要性

変形性膝関節症の痛みは、本当に辛いものです。「軟骨がすり減っているから仕方がない」と諦めていませんか?

動くたびに感じる重い痛みや、朝のこわばりは、あなたの行動範囲を狭め、心の負担にもなってしまいます。

これまで、関節の痛みの原因は「軟骨のすり減り」だと考えられてきました。もちろん、軟骨は大切です。しかし、なぜ軟骨があまり減っていないのに痛みが強い人がいるのでしょうか?

最近の研究は、この長年の疑問に答える、「痛みの原因は、病気の進み具合によって変わってくる」という新しい考え方を示しています。

この研究は、痛みの原因を正しく理解し、適切な時期に適切なケアをすることが、痛みを和らげるための大切な一歩になることを教えてくれます。

専門的な内容を、分かりやすい言葉でご説明しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

(出典:Morgan et al., “Changes to the activity and sensitivity of nerves innervating subchondral bone contribute to pain in late-stage osteoarthritis,” PAIN, 2022)

痛みの原因は一つじゃない! 進行度で変わる「痛みの発生源」

この研究は、関節炎の状態を詳しく調べ、「痛みの信号を送る神経」が、病気が進むにつれてどのように変化するかを確認しました。まるで痛みの司令塔が、時間とともに場所を移していくようなイメージです。

1. 【病気の始まり】「関節の表面」が炎症で敏感になっています

膝に水がたまったり、急に痛みが増したりする「病気の初期」や「一時的に悪くなった時期」の痛みは、軟骨の神経が痛みを感じている訳ではありません。軟骨自体には痛みを感じる神経がないため、主に関節周りの「関節包の袋」や「滑膜」などの柔らかい組織の炎症(腫れ)が、痛みを感じる引き金になっています 。

  • 軟骨の傷がまだ小さくても、関節表面部分の柔らかい組織である「関節包の滑膜」に存在する神経が、炎症により「興奮しやすい状態」になります 。
  • 少し動かしたり、触れたりしただけでも、興奮した神経が、痛みの信号を強く脳に送ってしまう状態です。

2. 【病気の進行】「軟骨の下の骨」の神経が目覚める

さらに変形が進み、軟骨が大きくすり減ってしまうと、軟骨の下にある「骨にまで損傷が達してしまいます」。この状態になると、痛みの司令塔はさらに奥へと移動します 。

  • 研究によると、この「変形が進んだ段階」になって初めて、「骨の内部」を通る神経も敏感になり、痛みを感じることがわかりました。
  • 特に、強い痛みを感じている方は、この「骨の土台にまで損傷が達している」ことが原因である可能性が示されています。

※軟骨自体には痛みを感じる神経がなく、軟骨自体の損傷だけでは痛みを感じることはありません。

つまり、どういうこと? 変形性膝関節症への早期の対処が将来の膝を守ります

この最近の知見は、膝関節の健康を守る上で、非常に重要なメッセージを持っています。

変形性膝関節症は、軽い段階(ステージ1)の柔らかい組織の炎症から始まります。さらに軟骨が減っていくと、最終的には軟骨の下にある「骨の土台にまで損傷が達する」(ステージ4などへ進行)病気です。

研究が示すように、損傷が**「骨の土台」にまで達する進行した段階**になると、痛みへの対処が非常に難しくなってきます。この段階の重い痛みが、多くの方が「手術(人工関節)」を考える大きな理由となっています。

だからこそ、まだ痛みが軽い「初期の段階」で専門家と相談し、関節にかかる負担を減らしていく。
これにより進行を防ぎ、予防的な対処を始めることが、非常に大切になります。早めに手を打つことが、将来の「膝の健康寿命」を伸ばすことにつながるのです。

大切なのは「どこが痛んでいるか」を知ること

レントゲンで「軟骨がすり減っている」と言われても、すぐに絶望する必要はありません。あなたの痛みが、この研究で示された「炎症による初期の痛み」の段階なのか、「骨の土台まで進んだ痛み」の段階なのか、専門家と一緒に見極めることが大切です。

整体や医療機関の専門家は、あなたの関節の動きや痛むタイミングを詳しく確認し、どの段階のサインなのかを判断するお手伝いができます。

必要以上に心配しすぎず、「私の痛みの原因はどこにあるのだろう?」と前向きに探る姿勢が、痛みの軽減と進行を防ぐ確かな一歩となります。

まとめと行動への提案

変形性関節症の痛みは、軟骨のすり減りだけでなく、病気の進行度に応じて「関節の表面」の炎症なのか、「骨の内部」の神経の興奮なのかと原因が進行し変化していく可能性があることが分かりました 。

これは、たとえ長く痛みを抱えていても、痛みのメカニズムを理解し、段階に合わせたケアをすることで、痛みをコントロールできる希望があるということです。

「いつものことだから」と痛みを我慢せず、少しでも違和感や不安を感じたら、まずは信頼できる専門家にご相談ください。体の状態を正確に把握し、なるべく早い段階で適切なケアを受けることが、あなた自身の関節の健康と、より豊かな生活を守るための大切な行動です。


(専門家よりのお願い) 関節の痛みは生活習慣とも密接に関わっています。無理のない範囲で体を動かす方法や、日常の注意点について、専門家と一緒に話し合い、痛みの進行を緩やかにしていきましょう。

めぐみ整骨院